ある泥棒を想像してください。仕事の直前に地元の警察署へ入り、これから狙う家の間取り図を広げ、錠前の写真と自分の運転免許証のコピーを当直の巡査部長の机に並べる。そして、その机を使わせてもらう特権のために月額料金を払う。コントのような話ですが、Semrush、AccuRanker、Wincher、Nightwatch の中でクライアントの案件を回している欧米の何千もの SEO 代理店やアフィリエイトサイト運営者の日課は、まさにこれです。

カンファレンスで聞くような「ユーザー体験の向上」という上品な言い回しは、ここではやめておきましょう。商業 SEO のプロは、実際には何に対してお金をもらっているのでしょうか。Google のランキングシグナルを解析して操作し、クライアントのページを他の誰よりも上に押し上げることです。Google の検索品質チームから見れば、商業 SEO は敵です。

では、このゲリラ戦士は毎朝何をしているのでしょう。順位チェックツールにログインし、クライアントのドメインごとにきれいにフォルダを分け、残りのプライベートブログネットワークやアフィリエイトサイト群をつなぎ、競合を追加し、いま必死に押し上げようとしている稼げるキーワードと地域の正確なリストをアップロードします。その間、プライベートな作業スペースの天井には、Google 自身のカメラがしっかり取り付けられ、赤いランプを点滅させています。

1. 作戦室の中の監視カメラ

Google の順位を追跡するために作られた SEO ツールなら、せめて顧客のプライベートなダッシュボードに Google を入れないだろう。そう思っているなら、業界で人気の順位チェックツールの中身を少しのぞくだけで、その幻想は消えます。

  • AccuRanker:ログイン後のアプリ app.accuranker.com のコードに、Google アナリティクス 4(G-D2SXNT78V1)と Google 広告のコンバージョントラッキング(AW-983697634)が直接組み込まれています。
  • Wincher:app.wincher.com の作業スペースでは、ダッシュボードが Google タグマネージャーを読み込み、GA4 にデータを流しています。一緒にいるのは Hotjar。画面の操作、クリック、スクロールを記録するために作られたセッション録画ツールです。
  • Nightwatch:app.nightwatch.io にログインすると、Google アナリティクス、Google タグマネージャー、PostHog、そして画面録画つきの Microsoft Clarity が出迎えてくれます。Nightwatch は隠そうともしていません。同社のプライバシーポリシーには、本格的なセッションリプレイ用トラッカーと並んで、「Google Analytics on-page script (tracking user sessions)」がさらりと記載されています。
  • Semrush:ログインが終わる前から、Semrush はシネコン並みの上映を始めます。GA4、ユニバーサル アナリティクス、Google 広告、DoubleClick。さらにセッションリプレイと行動解析の四人組の銃殺隊、Hotjar、Microsoft Clarity、Mouseflow、Amplitude Session Replay です。

この裏にある、エンジニアリングのあきれるほどの無能さを考えてみてください。これらの会社は Google を出し抜こうとする人々にツールを売っています。それなのにプロダクトチームは、グロースマーケティングの誰かが「ファネルのコンバージョンを測りたい」と言ったばかりに、ありきたりのマーケティング用トラッカーと画面録画ツールを、ログイン後の作業スペースに何も考えずに貼り付けたのです。

2. 日本のツールは? 玄関先にはやはり Google

日本では事情が少し違う、と思いたいところです。ところが日本の検索はほぼ Google で、Yahoo! JAPAN の検索も Google のエンジンで動いています。つまり国産の順位チェックツールも、追いかけているのは Google の順位です。そこで、よく知られたツールの公開ページを実際にのぞいてみました。

  • Gyro-n SEO:トップページで Google タグマネージャー GTM-M7RPW23 が読み込まれています。
  • SEARCH WRITE:トップページで Google タグマネージャー GTM-WMK4TJZ が読み込まれています。
  • ノビリスタ:トップを開くと、いきなりログインページです。そのログインページで、Google アナリティクス 4 のタグ G-VR80BDDGMT がすでに動いています。パスワードを入力する前から、Google が横で見ているわけです。
  • GRC:本体は Windows 用のソフトなので、中身までは確認していません。ただ、紹介ページには今も旧式の urchin.js と UA-217083-4 が残っています。もはや化石です。

私たちが見たのは公開ページだけで、ログイン後の画面は確認していません。ただ、私たちの経験では、トップページに Google アナリティクスがあれば、ほぼ例外なくアプリの中にもあります。アナリティクスをきれいに切り分けるのは難しいものです。どちらにしても、Google には見つかります。

3. 「でも Google 検索は Google アナリティクスを見ていない!」

この話になると、素朴な SEO 担当者たちはお気に入りのおとぎ話を暗唱します。「Google アナリティクスは厳密に分離されている! 検索チームは GA のデータに触れることを許されていない!」

本当でしょうか。ひとつの巨大な広告企業の中で、同じサーバー基盤の上にいながら、402号室の社員サラは、404号室の社員デイブが管理するデータベースに物理的に問い合わせできない、というふりをするのでしょうか。

Google 自身のアナリティクス ヘルプにも、データ共有が有効な場合、アナリティクスのデータは Google のプロダクトとサービスの改善に使われると明記されています。そこには「Google 検索の結果を改善するため」まで含まれています。

もっと重要なのは、Google の公式な約束にどれだけの価値があるか、私たちはもう知っているということです。十年以上にわたり、マット・カッツやゲイリー・イリーズといった Google の広報担当者は、ウェブマスターの目をまっすぐ見て、Google はサイトの順位付けに Chrome ブラウザのデータやユーザーのクリックストリームを使っていないと誓ってきました。

  • 2024年の API 流出:2024年5月、Google 検索 API の内部ドキュメント数千ページが流出し、Google はその真正性を公式に認めました。中には chromeInTotal や uniqueChromeViews(Google の Chrome ブラウザから直接サイトのトラフィックを測る属性)があり、goodClicks と badClicks を数える NavBoost システムも並んでいました。
  • 宣誓のうえでの証言:米司法省の反トラスト訴訟(連邦判事が Google を違法な独占と認定して終わった裁判)で、Google 検索担当副社長のパンドゥ・ナヤックは、NavBoost とユーザーのクリックデータが長年にわたり Google の最も強力なランキングシグナルのひとつだったことを、宣誓のうえで認めざるを得ませんでした。

検索に Chrome のトラフィックもクリックデータも使っていないと、十五年間あなたに面と向かって嘘をつき続けてきた企業が、今度は、順位チェックツールの Google アナリティクスのタグから流れ出すテレメトリーは検索エンジニアが決して触れない神聖な金庫に保管されている、と信じてほしいと言うのです。せいぜい頑張って信じてください。

日差しを浴びた円形劇場の白い段と、温かみのある黄色をアクセントにした幾何学的な曲面の壁。
イメージ · 作者: Zulfugar Karimov / Unsplash · ライセンス

4. あなた自身の手で署名した、ネットワークの完全な地図

たとえ Google の誰ひとりセッションリプレイを見る手間をかけなかったとしても、Google のスクリプトが仕込まれたツールを使うだけで、あなたの事業の完全な関係図を渡していることになります。

  1. ID の突き合わせ。あなたは順位チェックツールを Google Chrome で開きます。Gmail、Google Search Console、Google 広告にすでにログインしているのと同じブラウザです。ツールのダッシュボード内で動く Google アナリティクスと DoubleClick の Cookie は、まったく同じブラウザセッションと Google アカウントの ID を共有しています。
  2. OAuth による自白。「オールインワンのレポート」を手に入れるために、SEO 担当者はクライアントの Google Search Console と Google アナリティクスのアカウントを、Google の OAuth トークンで順位チェックツールに自ら進んで接続します。

SEO 担当者が自分の Google の Cookie でログインし、Google 公式の OAuth トークンで二十のドメインを連携させ、今月押し上げたい利益率の高いキーワードをそのまま打ち込んでくれるのです。リンクネットワークを見つけたり、どのドメインが同じアフィリエイトサイト群に属するかを割り出したりするのに、高度な AI アルゴリズムなど必要ありません。

5. この調書を誰に渡しているのか

この喜劇を味わうには、そもそも Google が独立系の SEO やパブリッシャーをどう扱っているかを思い出す必要があります。この十年、Google と SEO 業界の関係は、公開処刑の見本のようなものでした。

  • 手動による対策とリンクの一掃:PageRank に影響を与えようとして見つかった者は、Google のスパムに関するポリシーのもと、何年にもわたってアルゴリズムによる壊滅と手動ペナルティを受けてきました。
  • 「ヘルプフル コンテンツ」の大虐殺:2023年後半から2024年にかけて、Google のヘルプフル コンテンツ アップデートは独立系パブリッシャーを一掃し、検索結果の上位を Reddit のスレッド、Quora のスパム、巨大企業のドメインのために空けました。独立系レビューサイト HouseFresh がオーガニックトラフィックの 91% を失ったのは有名な話です。
  • 「サイトの評判の不正利用」というギロチン:2024年5月以降、Google はほとんど警告もなく、ウェブ中のパラサイト SEO や商用セクションを組織的に吹き飛ばしています。
  • 残ったクリックまで奪う:ピュー・リサーチ・センターの調査によると、Google が検索結果の一番上に AI による概要を貼り付けると、ユーザーが従来のオーガニックリンクをクリックするのは訪問のわずか 8% にとどまります(AI なしの15%からほぼ半減)。AI の枠の中に埋もれたリンクがクリックされるのは、哀れにも 1% です。

Google はあなたのコンテンツをただで吸い上げ、AI の枠でサイトを干上がらせ、アップデートで独立系ドメインを葬り、SEO による操作を罰すべき違反として扱います。そしてあなたは、そのお返しに月額料金を払って、プロジェクトの一覧とキーワード戦略をそっくり Google 自身のトラッキングスクリプトに流し込んでいるのです。

6. デザート:どちらも偽善者。そして唯一の例外

とどめはこれです。こうした順位チェックツールはどれも、Google の検索結果を大量にスクレイピングして動いています。これは Google 自身の利用規約に真っ向から違反する行為です(だからこそ Google は CAPTCHA や IP ブロックで SERP スクレイパーと戦い続けています)。つまり、これらのサービス自体が規則破りなのに、顧客が座っている奥の部屋に、わざわざ警官を招き入れているのです。

そして、SaaS のダッシュボードに Google アナリティクスを入れるのは、避けられない物理法則などではありません。Ahrefs を見てください。確かに、公開されているマーケティング用のトップページには、広告からの流入を測るための Google アナリティクスがあります。しかし、プロジェクトが置かれている実際の作業スペースにログインした瞬間、管理画面の中に Google アナリティクスはありません。Ahrefs は、ユーザーの作業スペースでの行動をマウンテンビューに流す代わりに、独自の社内テレメトリーを作ったのです。これが証明しているのは単純なことです。SEO のダッシュボードから Google の目を締め出すことは、最初から十分に可能でした。他の順位チェックツールの書類仕事屋たちが、面倒がっただけです。

結論

このワークフロー全体は、ひとつの単純な絵にまとまります。あなたは Google のアルゴリズムを出し抜く対価としてクライアントからお金を受け取ります。そして自腹で、Google アナリティクス、Google 広告のタグ、セッション録画カメラが仕込まれた作業スペースに入り、自分のアカウントの身元、管理しているすべてのドメイン、上位表示させたいキーワードの正確なリストを並べてみせるのです。

道化を演じたいなら、どうぞ、Google がダッシュボードに居座っている順位チェックツールで案件を回し続けてください。それ以外の方は、次のプロジェクトをアップロードする前にブラウザの開発者ツールを開き、作業スペースの天井に誰のカメラが取り付けられているかを確かめてください。